尿酸値が高いとどうなる?起こりえる病気と尿酸値を下げる対策法。
健康診断や人間ドックで「尿酸値が高い」と注意されたけれど、自覚症状は何もないし、何が問題なんだろうかと疑問に思う人が多いでしょう。尿酸値が高い状態が持続すると、さまざまな生活習慣病や重篤な病気を併発する危険が極めて高くなることが問題なのです。
社会人になって上司や先輩からよく聞くようになった「尿酸」や「プリン体」とはそもそも何なのか、尿酸が高い原因は何なのか、尿酸値が高い人はどんな病気になるのかといった「脳産地が高いとどうなる?」といった疑問から、尿酸値を下げるためには何をすればいいのかを詳しく解説していきます。
Contents
健康診断・人間ドッグで判明!尿酸値が高い。。
尿酸とは、「プリン体」という物質が肝臓で分解されるときに出る老廃物です。プリン体とは、生物の身体を動かすエネルギー源であり、生物の核酸(DNAやRNA)の構成物質として、全ての生物の細胞核に含まれています。
古くなって壊された細胞中のプリン体は再利用されて新しい細胞の原料となるので、尿酸とプリン体は生物の身体の中で常に代謝・生産されています。
1日に肝臓で生産される尿酸は約700mgであり、これが血中に溶け込んで腎臓へ運ばれます。ヒトの体内には約1200mgの尿酸が尿酸プールとして貯蔵されています。腎臓で再利用のために吸収され、余った分の大半が尿から、一部が汗や便から体外へ排出されます。
ところが、何らかの原因で、尿酸がきちんと排泄されない場合や体内でプリン体が急増した場合に、血中尿酸値が上昇するのです。
一般的な血中尿酸値の平均は、男性4.0~6.5mg/dL、女性 3.0~5.0mg/dLであり、7.0mg/dL以上で「高尿酸値血症」と診断され、要注意となります。これは、血中尿酸値が7.0mg/dLを超えると、血中で飽和状態になった尿酸が体内に蓄積しやすくなるからです。
尿酸値が高い原因とは?
尿酸値を上昇させる原因は、遺伝的要因と環境的要因に分けられますが、全てが解明されているわけではありません。尿酸値が高くなる原因として考えられているものを説明します。
① 遺伝
腎臓から尿酸を排泄する能力は、尿酸トランスポーターというタンパク質によって左右されるのですが、最近の研究で特定の遺伝子を持つ人には、この排泄能力が生まれつき弱いケースが多いことが判明しました。
近年、増加している20代の男性高尿酸血症患者には、この遺伝的な要因があてはまる人がいると考えられます。薬などで尿酸トランスポーターの作用を改善することは不可能であるため、家族や親戚に高尿酸血症や痛風がいる人は、若いうちから尿酸値を上げない生活習慣を身につけることが重要になります。
② 食生活
食物から摂取する食事由来のプリン体量は全体の2~3割にすぎず、残りは新陳代謝によって体内で生産されると考えられています。しかし、プリン体を過剰摂取すると、当然のことながら、体内の総プリン体量が増加して血中尿酸値が上昇します。
③ 飲酒
アルコールには尿酸値を上げる作用があります。どんなアルコールでも体内で分解されるときに尿酸が作られること、ビールや紹興酒などのアルコールにはプリン体が多く含まれていること、アルコール分解時の副産物である乳酸には、腎臓での尿酸排出を妨げて尿酸が体内に蓄積させる作用があることなどが原因です。
④ ストレス
疫学調査で、ストレスが尿酸値を上昇させることは以前から知られていました。そして、最新の名古屋大学の研究で、ストレスがかかると、xanthine oxidoreductase (XOR)という酵素が活性化されてプリン体の代謝を促進し、その結果、体内での尿酸の産生が増大する仕組みが解明されました。
⑤ 激しい運動
サッカーや短距離走、筋トレなどの激しい無酸素運動をすると、尿酸値が一時的に上昇します。身体の新陳代謝が活発になり、細胞が壊されてプリン体が放出されること、大量の汗をかいて脱水症状になることが原因です。ただし、軽いジョギングやウォーキングなどの有酸素運動では、尿酸値は変わりません。
⑥ 他の病気による影響
腎不全などの腎機能が低下する病気では、尿酸がうまく排出されないために尿酸値が上昇します。また、中性脂肪が高い「高トリグリセリド血症」では、肝臓での脂肪酸の合成と同時にプリン体の合成も促進されるために、尿酸が多く産生されます。
肥満や高脂血症で内臓脂肪が蓄積したり、高血糖症で血糖値が上がったりすると、インスリンの働きが低下して腎臓からの尿酸排泄が低下することが知られています。
⑦ 薬の影響
腎臓からの尿酸排出減少の作用があるために尿酸値を上昇させる薬剤は、サイアザイド系降圧利尿剤やループ系利尿剤などの利尿剤、抗結核薬のピラジナマイドなどです。また、喘息治療薬のテオフィリンや少量のアスピリンも尿酸値を上げることが知られています。
この他にも尿酸値を上げる薬剤がいくつかあるので、持病で薬を服用している人は必ず医師と相談してください。
尿酸値が高い人の特徴とは?
高尿酸血症になりやすいタイプをまとめてみました。
- 30歳以上の男性
- ステーキやレバー、揚物などの脂っこい食事を好む
- 大食漢で満腹するまで食べないと気が済まない
- 大酒飲みで毎日飲む
- 仕事上のつきあいや仕事帰りの呑み会が多い
- 外食が多くて野菜不足
- 仕事や私生活でストレスが多い
- 運動不足で肥満ぎみ
- 血縁者に痛風を発症した人がいる
高尿酸血症は、男性が95%以上を占めます。圧倒的に女性が少ないのは、尿酸を排出する能力には男女差があり、女性ホルモンが関係するためと考えられています。
特に、働き盛りで責任が重くなって、付き合いの呑み会が増える30~50代のサラリーマンでは、3~4人に1人が尿酸値が高い痛風予備軍なのです。
尿酸値が高いと、起こりえる病気。
高尿酸血症を放置すると、痛風を始めとした、さまざまな合併症を引き起こします。
① 痛風
痛風は高尿酸血症が引き起こす代表的な症状です。尿酸は、血液中で飽和状態になると、血中のナトリウムと結合して結晶化し、関節に蓄積します。この結晶が何らかの刺激で血中に剥がれ落ちたとき、白血球が異物と見なして攻撃し、「痛風発作」と呼ばれる急性関節炎を起こすのです。関節が赤く熱を帯びて腫れあがり、「風が吹いても痛い」という語源の通り、患部を動かすことすらできない激烈な痛みに襲われます。
最大の好発部位は足の親指のつけ根で、全体の7割を占めます。その他、かかと、くるぶし、足首、膝など、膝から下の下肢で全体の9割になります。肘、手首、指の上肢の関節にも発症しますが、股関節などの大きな関節には殆ど起こりません。
痛風発作は血圧が下がる夜中から明け方にかけて発症しやすいです。就寝中は血液の循環が悪くなって、手足の体温が下がり、尿酸の結晶ができやすくなるためと考えられています。運動で大量の汗をかいた、暴飲・暴食をした、空調で身体を冷やした、きつい靴を履いた、強いストレスを感じたなどの要因も、痛風発作の引き金になります。
痛風発作を起こしてしまったら、まず患部を氷や湿布などで冷やしてください。横になって患部を心臓の位置より高くして安静にすると、痛みが和らぎます。患部のマッサージや温湿布、入浴、飲酒、アスピリン系の鎮静剤の服用は逆効果で発作を悪化させます。普段から尿酸降下薬を服用している人が発作を和らげようと処方量以上に飲むと、痛みを悪化させたり、副作用を引き起こしたりするので、絶対に避けてください。
痛風発作は、そのまま放置しても、白血球が死滅する7~10日で収まります。しかし、薬物療法と食事療法を行って高尿酸血症を改善しなければ、何度でも痛風発作を繰り返します。発作が頻発すると関節炎と尿酸沈着が進行して、関節の周囲に痛風結石という瘤ができ、関節が変形してしまいます。
② 尿路結石・腎臓結石
尿路結石や腎臓結石は高尿酸血症の人に高い確率で見られる合併症です。尿酸は水に溶けにくい物質なので、腎臓や尿路で結晶化して結石を作りやすいからです。腎臓でできた結石が尿路に移動したときに、背中から脇腹にかけて激痛に見舞われます。結石が移動中に尿管や腎盂を傷つけた場合は血尿が出ます。
小さい結石は徐々に尿路を移動して尿と一緒に自然に排出されますが、大きい結石はレーザーなどで石を砕く手術が必要になります。結石が尿管や腎盂で詰まって尿が出なくなり、重篤な尿毒症に陥って、手遅れになると死亡することもあります。
③ 慢性腎不全
腎臓で尿酸の沈着や結晶化が進行すると、「痛風腎」になって腎機能が低下します。そして、腎臓の働きが悪くなって尿からの尿酸の排泄機能が低下すると、血中尿酸の濃度が上がって沈着が加速し、更なる腎機能の低下を招きます。痛風腎は自覚症状が少ないため、気づかずに進行して慢性化しやすい病気です。最悪の場合、腎不全になって腎臓が全く機能しなくなり、週2~3回の人工透析が一生涯必要となります。
④ その他の合併症(生活習慣病)
研究が進むにつれて、高尿酸血症の人は、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の合併症を起こしやすいことが判明してきました。そのうえ、高尿酸血症や高脂血症の人は、血液の流れが悪くなって動脈硬化を起こすので、脳卒中や心筋梗塞などの虚血性疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害などの生命にかかわる重篤な病気になる危険性が極めて高くなります。
尿酸値が高い人の全員が痛風発作を起こすわけではなく、痛風自体は命に関わる病気ではありません。高尿酸血症の恐ろしい点は、自覚症状がないまま身体のあちこちで尿酸沈着が徐々に進行し、さまざまな合併症の引き金になることなのです。
尿酸値は自然に下がることはない!
自覚症状がないから、「尿酸値はそのうち下がるだろう」と、そのまま放置する人がいますが、何の対策もなしに尿酸値が自然に下がることはありません。尿酸値を下げるには、適切な薬物療法や食事療法を行って、尿酸値をコントロールする必要があるのです。場合によっては、検査で尿酸が高い原因を突き止めることも必要になります。
また、痛風発作の激痛が治まって処方された尿酸降下薬で尿酸値が下がると、喉元過ぎれば暑さを忘れ、多忙を理由に面倒な通院や薬の服用を辞めてしまう人がいます。しかし、高尿酸値血症の最大の原因である生活習慣を改善せずに、薬の服用を中断すると、せっかく下がった尿酸値はあっという間に元に戻ってしまいます。
尿酸値を下げるために、今から取り組むべき対策法!
尿酸値を下げるために、日常生活で簡単に行える対策があります。
① 肥満の解消
長年の研究によって、肥満と高尿酸血症は強い関連性があり、体重増加で尿酸値が上昇し、体重減少で尿酸値が下がることが確認されています。
食物を過剰摂取すると、皮下脂肪や内臓脂肪として体内に蓄積されます。この内臓脂肪は遊離脂肪酸に分解され、血液で肝臓へ送られて中性脂肪に合成されるのですが、このときに同時にプリン体の代謝も活性化されるので尿酸産生が増加するのです。また、内臓脂肪は体内でのインスリンの働きを阻害して、腎臓からの尿酸の排泄を低下させるため、ますます尿酸値が上がるわけです。
だから、体重と内臓脂肪を減らして肥満を解消すれば、尿酸値を下げるのに大きな効果があります。とりわけ肥満解消に効果的な対策は運動です。ジムに通う暇がない人は、エレベーターではなく階段を使う、通勤で1駅を余分に歩く、休日にウォーキングをする、通勤に自転車を使うなど、日常でできる軽い運動から始めてみましょう。
② プリン体の多い食品を控える
尿酸値と食生活は密接に結びついているので、肉類や魚介類などのプリン体が多い食材を減らしてプリン体の総摂取量を抑え、プリン体の少ない豆腐・野菜の多い食事を心がけて食生活を改善することが尿酸値を下げることに繋がります。
とりわけ、レバー、魚卵、白子、イワシ、カツオ、エビなどのプリン体が極めて多い食材に気をつけてください。「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」は、プリン体摂取量を1日400mg以下にすることを推奨しています。また、糖分の多い飲料や果糖の多い果物は尿酸値を上げる原因となります。
関連記事:痛風に悪い食べ物まとめ。プリン体だけじゃない気を付けるべき食習慣とは?
③ アルカリ性の食品を積極的に摂る
尿酸はアルカリ性の液体に溶けやすい性質を持っているので、食事によって尿を弱アルカリ性にすれば、尿酸の排出を助けることができ、腎臓結石や尿路結石の危険度を減らすことができます。ワカメ、コンブ、ヒジキ、ホウレンソウ、ゴボウ、サツマイモ、ニンジンなどが尿をアルカリ性にしやすい食材です。肉類や魚卵はプリン体を豊富に含んでいるうえに、尿を酸性にするので避けたほうがいいでしょう。
関連記事:痛風に良い食べ物・飲み物まとめ。痛風対策に積極的に食べた方がいいものとは?
④ 水をたくさん飲む
水分をたくさん摂ると、尿量が増えて尿酸の排泄を助けるので、尿酸値を下げることができます。同時に、腎臓結石や尿路結石も予防できます。厚生省のガイドラインでは1日2Lの飲水が目安です。水だけ飲むのが苦手な人は、麦茶やウーロン茶、番茶でもかまいません。糖分の多いジュースや炭酸飲料は肥満や尿酸値上昇に繋がるので避けましょう。お酒を飲むときも、水割りの水の量を増やす、水を一緒に飲むなどの工夫をすると効果があります。
⑤ 食生活・食習慣の見直し
もともと痛風は西洋の病気であり、明治時代の日本に痛風患者はいませんでした。一汁三菜で野菜や豆腐を多用する和食は、プリン体や脂肪分が少なく、極めてバランスの良い食事だったからです。ところが、高度経済成長によって食生活が欧米化し、高脂肪・高タンパク・高プリン体の食事を飽食するようになってから、日本人の高尿酸血症や高脂血症が急増しました。
つまり、高尿酸血症や高脂血症、高血圧などの生活習慣病の改善をするには、毎日の食生活の見直しを行うことが重要なポイントになります。
- 暴飲・暴食をせず、腹八分目にする
- 早食いや一気食いをせず、よく噛んでゆっくり食べる
- カロリーの高い料理を控える
- バランスの良い食事を3食きちんと摂る
- 毎日、規則正しい時間に食事をし、特に9時以降の飲食を避ける
- 禁酒、できない場合は飲酒量を減らし、休肝日を設ける
- 間食は、お菓子やスナック類ではなく、尿酸値低下の効果のある乳製品や牛乳などにする
- 醤油や味噌など塩分の多い調味料を減らす
以上のような、食生活の見直しを心がけてみてください。
食生活を正していきながら、痛風に効く成分を含むサプリメントも上手に活用するとなお効果的です。痛風予防、対策に有効なサプリメントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:痛風に効くサプリ7選!普段の食事にプラスして手軽に痛風予防・対策を。
薬による治療、病院について。
高尿酸血症と診断されて病院を受診したからといって、全員がすぐに薬を処方されるわけではありません。
どんな薬でもそうですが、薬にはメリットとデメリットがあり、医師は薬の効果がデメリットを上回ると考えられる場合のみ、薬の服用を決めるからです。尿酸低下薬として一般的なフェブリク錠には、だるさ、食欲不振、肝機能障害、皮疹や発疹の過敏症といった副作用のデメリットがあります。
痛風を発症しておらず、尿酸値が7.0~8.0mg/dLの人は、最初は投薬ではなく、食生活と生活習慣の改善を勧められるかもしれません。尿酸値が8.0~9.0mg/dLでは痛風発作のリスクが高いので、尿酸値降下薬の投薬が行われるケースが多いです。既に痛風発作や尿路結石を経験している人、慢性腎臓病がある人、痛風結節ができている人は、早急に適切な治療が必要になります。
だから、症状もないし、薬を貰えないなら受診は必要ないと考えずに、一度は受診してチェックを受けておくことをおすすめします。というのも、尿酸値が高い人は、痛風腎や生活習慣病の合併症を起こしている割合が高いからです。高血圧や高脂血症、動脈硬化などを早期発見して治療しておけば、将来的に虚血疾患や血管障害疾患などの重篤な合併症を併発することが避けられます。
また、痛風発作を起こす前兆として、発症部位に、ピリピリ、ジンジン、ムズムズした違和感を感じる人がいます。この前兆の時点でコルヒチンという薬を服用すれば、高い確率で痛風発作を回避することが可能です。痛みだしても、2~3時間以内に服用すれば発作を軽減できます。コルヒチンは発作の極期に服用しても効果が殆どないので、少しでも痛みを感じたら、すぐに医師の診察を受けることが好ましいのです。だから、前もって受診して問診や検査を受けておくと、痛風発作を起こしてしまったときに迅速に対応して貰えます。
何年もかけて悪化した尿酸値のコントロールは簡単ではなく、長期間の努力が必要です。しかし、尿酸値が高い人でも、食事や飲酒に気をつけ、適切な運動を行うことで、尿酸値が改善されて安定すれば、尿酸降下薬の服用を中止することができます。ただ、食生活や生活習慣を変えずに同じ生活を続けると、痛風の激痛の再発に怯えて健康診断の検査結果に一喜一憂しながら、薬をずっと飲み続けることになるかもしれません。
まとめ
高尿酸値血症は自覚症状がないので、ついつい対策を先延ばしにしてしまいがちです。しかし、尿酸値の異常は、「生活の乱れで身体にゴミが溜まっているよ」という赤信号なのです。
痛風を予防するために尿酸値を下げる努力をすれば、同時に肥満や高血圧、動脈効果などの厄介な生活習慣病も予防することができるので一石二鳥です。この機会に、食生活や生活習慣を見直して健康的な生活を目指してみてはいかがでしょうか。